料理人と会話が交わせる楽しさ

2012.01.07

「これって、何だか分かる?」隣に座っていた友人の女性が、鉄板の上で熱せられた細長い食材を目にしながら、こう尋ねてきた。「さあ、何だろうね」と私。「この食感、マコモ茸かしら」「いえ、マコモ茸は季節が終わりましてね。実はそれ、黄色いニンジンなのですよ」ここは、グランドハイアット東京の鉄板焼レストラン「けやき坂」。私たちが神妙な面持ちで料理を味わっていたところ、料理人の方がこう教えてくださり、その意外性に、二人で「へえ〜」と声を洩らした。

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鉄板焼という業態で、料理人が目の前にいるからこそ生まれた会話だった。このホテルでは二〇〇七年、旧来の施設を外国人デザイナーに依頼して改装、「革新的な鉄板焼」を目指して「けやき坂」を開業した。料理人の背後には、市場のように、新鮮な野菜がたくさん並んでいる。注文があれば、その場で調理してくれるという。さて、私と友人は、食事を終えると、デザートとコーヒーを取るための席に場を移した。昼の時間帯だったので、そこは自然光の明かりに包まれていた。その居心地の良さに、私たちは結局、食事を含めて三時間もレストランで過ごしてしまっていた。